熊本地震で平屋は倒壊|本当に地震に強い平屋の特徴
地震による平屋の倒壊で命を落とさないためには、被害の実態から学ぶことが重要です。
「平屋は2階建てより耐震性が高い」イメージを持つ方も少なくありませんが、実は熊本地震で平屋は倒壊しています。
本記事では、愛知県を中心に本当の耐震住宅を建築する工務店「ブルーハウス」が、熊本地震での平屋倒壊事例を紹介しつつ、地震に強い平屋の特徴を解説します。
<コラムのポイント>
- ・熊本地震は、観測史上初めて同一地域で震度7が連続発生した特徴的な地震です。
- ・熊本地震では、平屋が倒壊した事例も報告されています。
- ・新耐震基準・2000年基準が適用される時期に建築された平屋が倒壊した事例もあります。
- ・地震に強い平屋を建てるには、5つの特徴を押さえることが重要です。
地震から住まいとご家族を守り、安心して暮らしたい方はぜひ最後までご覧ください。
目次
熊本地震で平屋は倒壊した
政府の研究機関が熊本地震による建築物の被害を調査した結果によると、2階建てに限らず平屋も倒壊していることがわかりました。
出典:国立研究開発法人建築研究所 建築研究資料No.173号「平成28年(2016年)熊本地震建築物被害調査報告(速報)」表5.3-2
一部では、以下の理由で2階建てよりも平屋のほうが耐震性は高いと考えられています。
<平屋の耐震性が高い理由>
- ・2階がないため高さが低い
- ・2階がないため軽く低重心
- ・形状がシンプルで地震の力が集中しにくい
しかし、平屋でも瓦葺きの場合などは建物が重くなりやすく、形状がシンプルかどうかは設計によります。
耐震性が低い平屋の設計も不可能ではなく、実際に熊本地震で倒壊した平屋もあることから、「2階建てより平屋のほうが耐震性は高い」「平屋だから大丈夫」と言い切ることはできません。
平屋が地震に強いと考えられている理由は、以下の記事でも詳しく解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
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熊本地震の特徴
熊本地震の概要を以下にまとめました。
項目 | 前震 | 本震 |
---|---|---|
発生日時 | 2016年4月14日21時26分 | 2016年4月16日1時25分 |
規模 | マグニチュード6.5 | マグニチュード7.3 |
最大震度 | 震度7 (熊本県益城町) |
震度7 (熊本県益城町、西原村) |
人的被害 | 死者273名(関連死含む) 重軽傷者2,809名 |
|
住家被害 | 207,156棟 (浸水含み、うち全壊は8,667棟) |
出典:総務省消防庁「熊本県熊本地方を震源とする地震(第121報)」(2019年4月12日更新)
熊本地震の特徴は以下のとおりであり、それぞれ詳しく解説します。
<熊本地震の特徴>
- ・観測史上初めて同一地域で震度7が連続発生
- ・前震で耐えても本震で倒壊
- ・新耐震基準・2000年基準の平屋も倒壊
観測史上初めて同一地域で震度7が連続発生
熊本地震により、益城町では約28時間で震度7を2回観測しました。
1949年に震度7が創設されて以来、同一観測点で2度も震度7が観測されたのは気象庁の観測史上初めてです。
出典:気象庁「気象庁技術報告第135号平成28年(2016年)熊本地震調査報告」3頁
前震で耐えても本震で倒壊
政府研究機関の調査結果によると、前震では被害が軽微でも、本震で倒壊した例が多数確認されました。
前震では壁が外れただけでも、本震で完全に倒壊した木造住宅などがあります。
地震の規模(マグニチュード)は本震のほうが大きいとはいえ、前震で受けた損傷によって耐震性が低下した可能性は否定できません。
出典:国立研究開発法人建築研究所 建築研究資料No.173号「平成28年(2016年)熊本地震建築物被害調査報告(速報)」5.3-2頁
新耐震基準・2000年基準の平屋も倒壊
政府研究機関がまとめた調査結果によると、木造建築物において建築時期を3つに区分した倒壊・崩壊率は以下のとおりです。
建築時期 | 倒壊・崩落率 |
---|---|
~1981年5月 (旧耐震基準) |
28.2% (214棟) |
1981年6月~2000年5月 (新耐震基準) |
8.7% (76棟) |
2000年6月~ (2000年基準) |
2.2% (7棟) |
旧耐震基準が適用されていた時期に建築された古い木造建築物の倒壊・崩落率が高いものの、新耐震基準が適用される時期以降に建築された木造建築物も倒壊しています。
益城町中心部で新耐震基準が適用される時期以降に建築され倒壊した木造住宅の被害要因は、概ね以下のとおりでした。
- ・柱脚・柱頭の接合方法が釘打ち・かすがい程度:65.3%
- ・筋かい端部の金物が釘打ち程度:46.5%
上記は、いずれも現行基準(2000年基準)に適合していれば防げる被害要因です。
一方、建築基準法などで規制しにくい要因も挙げられており、主なものは以下のとおりです。
- ・平面不正形(斜めの壁やスキップフロアなど):15.8%
- ・増築・改修の影響:7.9%
- ・生物劣化:3.0%
なお、記載したデータは暫定的なものであり、日本建築学会の精査により変更される可能性があります。
出典:国立研究開発法人建築研究所 建築研究資料No.173号「平成28年(2016年)熊本地震建築物被害調査報告(速報)」表5.2-2、表5.3-2
旧耐震基準や新耐震基準、2000年基準については、それぞれ以下の記事で解説しています。
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熊本地震から学ぶ地震に強い平屋の特徴5つ
熊本地震の特徴や建築物の被害調査結果を踏まえると、地震に強い平屋は以下5つの特徴があります。
<地震に強い平屋の特徴>
- ・敷地の地盤が強い
- ・制震ダンパーを採用している
- ・耐震等級3を取得している
- ・許容応力度計算を実施している
- ・防蟻処理が充実している
平屋の新築を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
敷地の地盤が強い
平屋の構造だけでなく、敷地の地盤条件も重要です。
実際、熊本地震の調査結果では、倒壊した2000年基準(現行基準)の木造住宅7棟のうち、地盤変状の影響があったと分析されたものがあります。
出典:国立研究開発法人建築研究所 建築研究資料No.173号「平成28年(2016年)熊本地震建築物被害調査報告(速報)」5.3-26頁、5.2-1頁
地盤の影響で倒壊に至ることがあるため、国土地理院の「明治期の低湿地データ」や国土交通省の「KuniJiban」などで地盤情報を確認しましょう。
制震ダンパーを採用している
地震の後も安心して住み続けるためには、制震ダンパーの採用も効果的です。
制震ダンパーとは、地震の揺れを熱などに変えて吸収する装置です。
制震ダンパーを採用することで、構造部材に生じる変形と地震時に感じる揺れを抑えられます。
実際、熊本地震の本震でもお子さまが目を覚まさず、棚から食器が落ちることもなかった制震ダンパー採用住宅がありました。
地震後は、見た目ではわかりにくい損傷(耐震性能の低下)がある場合もあります。
制震ダンパーを採用することで、こわくて住み続けられないといった不安の軽減が可能です。
耐震等級3を取得している
政府の研究機関によると、耐震等級3の木造住宅16棟のうち、14棟は無被害、残り2棟は軽微又は小破の被害にとどまっていました。
出典:国立研究開発法人建築研究所 建築研究資料No.173号「平成28年(2016年)熊本地震建築物被害調査報告(速報)」5.3-3頁
耐震等級3を取得しただけで今後起こりうる地震で必ず倒壊しないとは言い切れませんが、安心感につながるのはたしかです。
地震に強い平屋を目指すなら、耐震等級3の取得を検討してみましょう。
構造計算を実施している
熊本地震では、耐震等級3を取得した木造住宅が倒壊した報告はありません。
一方、一般社団法人耐震住宅100%実行委員会の独自シミュレーションによると、熊本地震(本震)と同等の地震波において壁量計算(性能表示計算)の耐震等級3は倒壊しました。
同シミュレーションでは構造計算した耐震等級3では倒壊せず、計算方法の違いで耐震性(壁量)が変わるといった指摘がされています。
出典:一般社団法人耐震住宅100%実行委員会「熊本地震波による耐震等級検証結果に基づいた「耐震100推奨基準」を発表。」
より地震に強い平屋を建築したい場合、構造計算(許容応力度計算)による耐震等級3の取得がおすすめです。
防蟻処理が充実している
構造計算で耐震等級3を取得し、制震ダンパーを採用しても、構造躯体がシロアリの被害(蟻害)にあうと耐震性は低下します。
そのため、耐震性を維持するためには適切な防蟻処理が欠かせません。
地震に強い家の構造は、以下の記事で詳しく解説しています。
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まとめ
熊本地震では平屋も倒壊しており、「平屋だから地震に強い」と言い切ることはできません。
地震に強い平屋を建てるには、地盤情報を確認し、構造計算で耐震等級3を取得するなどの対応が重要です。
ぜひ本記事を参考に、地震から住まいとご家族を守り、安心して暮らせる平屋づくりを実践してください。
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ブルーハウスは、構造計算(許容応力度計算)で耐震等級3を取得できます。
さらに、熊本地震の前震1回、本震4回の計5回の実大加震実験を実施しても倒壊しなかった制震ダンパー「KRASOL」の搭載も可能です。
地震に強い平屋をご希望の方は、ぜひブルーハウスにご相談ください。
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