2022年度住宅ローン減税はどうなる?控除率縮小がマイホーム新築に与える影響は【速報】
先月から与党内で2022年度(令和4年度)税制改正に向けた議論がスタートしています。
家づくりやマイホーム購入を検討している皆さんにとって気になるのは「住宅ローン控除(住宅ローン減税)は、来年度どうなるのか?」という点ではないかと思います。
今回は、今週末にもまとまると言われている2022年度の住宅ローン控除の制度の見通しについて、現時点での情報をまとめてお伝えします。
2022年も間近の今、来年に家づくりや住宅の購入を考えている方は、税制改正の動きをしっかりチェックして、住宅会社と今からスケジュールを話し合っておくことをおすすめします。
<コラムのポイント>
・2022年度税制改正と住宅ローン控除(減税)改正の見通しについて最新情報をまとめています。
・2022年、注文住宅の新築を検討している方へ住宅ローン控除制度改正の影響について解説します。
2022年度の住宅ローン控除は控除率が下がる見通し
今月に入って、来年度の住宅ローン控除は、控除率をこれまでの年末借入残高の1%から0.7%程度に縮小する方向であるという報道が増えています。今月12月10日にもまとまる来年度の税制改正大綱で正確な改正案が発表されます。
もし、控除率が0.7%に縮小となった場合、例えば、年末の借入残高が4000万円の場合、現行制度では1%=40万円だった控除額が、0.7%=28万円になります。
このように、控除率が下がるということは、単純に控除額も下がるということで、消費者にとってはマイナスと感じるかもしれませんが、この改正には次のような目的があります。
・控除率縮小の目的は「逆ざや」状態の緩和
今回の住宅ローン控除の見直しの背景には、「逆ざや」と呼ばれる現象を緩和する目的があります。
現行の住宅ローン減税の控除率は、毎年の借入残高の1%で計算されます。しかし、今はネットバンクを中心とした住宅ローンの低金利競争が激しくなっています。
特に、変動金利型の金利相場は年0.4~0.6%と、住宅ローン控除の控除率1%を下回っています。
そのため、支払い利息よりも住宅ローン控除で戻ってくる税金の方が多くなる、つまり「より低金利で住宅ローンを借りると得をする」現象が起きていました。
現在の金融機関の低金利競争も、この住宅ローン控除のメリットを前面に押し出して顧客を獲得するために起こっています。
しかし、低金利でローンを提供することは金融機関にとっても赤字ギリギリの経営になっているという問題もあり、金融機関と消費者、お互いにとって健全性が損なわれているという側面が、今回の改正案につながっています。
控除期間を10年以上に延長も検討されています
控除率の縮小という、消費者にとってはあまり嬉しくない改正案ですが、同時に控除期間を現行の10年→11年以上に延長する案も検討されています。
延長後の減税期間は、主な住宅政策を担っている国土交通省が「15年」という案を主張しています。
逆に、財務省は減税規模を縮小したい考えから10年に据え置きを希望していましたが、コロナ禍を乗り越え、まさに景気回復に向かっていく過程にある今、「控除率を下げても期間を延長することで少しでも住宅取得への影響を少なくすべき」という方向に向かっているとのことです。
控除期間の延長が正式に決まれば、年数にもよりますが控除率が縮小した場合の影響が緩和されますね。
控除率1.0%→0.7%へ縮小で控除額に影響が出る人は?
「改正後に住宅を購入する人は、戻ってくる税金が少なくなって損をする?」と思う方もいると思います。
冒頭の計算のように、控除率1.0%が0.7%に減った場合、「最大控除額」は40万円から28万円に少なくなります(ローン残高の上限が4000万円の場合)。
制度改正前に住宅購入や契約をした方がお得なのでしょうか?
制度改正前の駆け込み契約は得なのか?
ただし、「あくまで減るのは最大控除額である」のため、安易な判断で駆け込み契約はせず、しっかりと控除額のシミュレーションを行ったうえで検討しましょう。
最大控除額を使いきれる?所得税・住民税の金額で控除額が変わる!
現行の控除率1%の前提でお話ししますが、4000万円の住宅ローンの借り入れ残高があるとして、すべての人が残高の1%=40万円の控除を受けられるわけではありません。
その理由は、それぞれの人によって所得税と住民税の金額が違うからです。住宅ローン控除は簡単に言えば、その人の所得税と住民税※の合計よりも大きい金額にはできません。つまり、年収が少ないほど所得税と住民税の合計も少なくなるので、最大控除額の40万円を使い切るのが難しいのです。
※正確には、所得税から控除しきれなかった金額は、住民税から控除することになっていますが、
・住宅ローン控除の控除可能額のうち、所得税から控除しきれなかった金額
・所得税の課税所得金額の7%(上限13万6500円)
上記のうちいずれか少ない方が住民税から控除される金額になります。
以下に、年収別に住宅ローン控除の総額と初年度の控除額をまとめてみます。
<前提条件>
・2021年12月に借入(控除率=毎年の借入残高の1%)控除期間13年
・借入金額4000万円 ・配偶者有り ・扶養親族合計2人 ・金利0.5% ・返済期間35年 ・建物価格5000万円
年収 | 住宅ローン減税(控除)総額 | 初年度の控除額 |
400万円 | 159.9万円 | 12.3万円 |
450万円 | 211.9万円 | 16.3万円 |
500万円 | 262.6万円 | 20.2万円 |
600万円 | 342.7万円 | 26.4万円 |
700万円 | 402.9万円 | 33.4万円 |
800万円 | 420.0万円 | 38.9万円 |
今回のシミュレーション条件の場合、最大控除額の40万円をほぼフルに使えるのは年収800万円以上の方ということになります。この仕組みは、具体的に家づくりの資金計画を始めてからでないと分からないことが多いので、いざ控除額のシミュレーションで「意外に戻ってくる金額が少なかった…」と思う方もいらっしゃいます。
今回のシミュレーションはあくまで1つのケースで、借入金額や返済年数、金利、建物の価格、扶養家族の人数など、様々な条件によっても控除額は変わります。
つまり、今回の税制改正で住宅ローンの控除率が縮小になったとしても、ご自身の年収や家族構成、自己費用も含めた建築費の総額など、ご自身のケースに合わせて詳細にシミュレーションすることで、必ずしも大きな影響がない、と分かる場合もあります。
<参考HP>
国税庁
「No.1212 一般住宅の新築等をした場合(住宅借入金等特別控除)」
「No.1213 認定住宅の新築等をした場合(住宅借入金等特別控除)」
総務省「新築・購入等で住宅ローンを組む方・組んでいる方へ 個人住民税の住宅ローン控除がうけられる場合があります。」
価格.comローン「住宅ローン控除(減税)シミュレーション」
住宅ローン控除制度が改正された場合、すでにローンを借りた人も対象になる?
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今回検討されている改正案は、すでに住宅ローンを借りて住宅を建築した方には影響がないと考えられます。
住宅ローン控除は、これまでにも何度か改正されてきましたが、すでに借りている人にさかのぼって改正内容が適用されたケースは今までありません。
住宅ローン控除は、基本的にはローンを借りた時点の制度が最後まで続きます。今年住宅ローンを借りて、控除率1%や控除期間13年が適用された方なら、来年度制度が変更されたとしても、1%の控除率と13年の控除期間が最後まで受けられます。
まとめ
今回は、12月に入ってより動向が注目されている2022年度の住宅ローン控除の見通しについて解説しました。
大切なのは、来年度の住宅ローン控除の改正が「いつから適用されるのか」という正確な情報を早く掴み、家づくりのパートナー(工務店やハウスメーカー、不動産会社など)と今から制度改正を見据えてマネープランのシミュレーションや家づくり、住宅取得のスケジュールを話し合っておくことです。マイホームを建てるタイミングは、制度を上手に利用できるタイミングも大切ですし、お子さまの入園入学など、ライフプランに応じた希望も、どちらも大切です。
具体的には、現行の制度の「工事請負契約や売買契約の期限」「入居の期限」このリミットがいつになるのかを、しっかりと情報を追っていく必要があります。今回は速報として現時点で発表されている情報をお伝えしましたが、正確な改正内容が分かったタイミングで、改めて正確な内容を発信したいと思います。
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