住宅の気密性が必要な理由、高気密・高断熱住宅のメリット・デメリットは?
注文住宅で家を建てるなら、自由な間取りで自然素材もふんだんに使った理想の住まいにしたいですよね。開放感のある吹き抜けやロフトなども取り入れて快適な暮らしをしたいと思うなら、断熱性や気密性も重要です。そこで今回は、現代の住宅に気密性が必要な理由や、高気密住宅のメリット・デメリットを解説します。ぜひ参考にしてくださいね。
目次
住宅の気密性についての考え方
住宅の気密性については、様々な考え方があります。日本の伝統的な考え方では、「夏を旨とすべし」と言われます。もちろん、夏の直射日光を遮る家づくり、湿気がこもらない家づくりが重要です。現代もパッシブ工事の考え方で夏の日差しにあわせて庇や軒を出したり、季節の風を利用した通風や室内の空気の循環を良くするなどの様々な工夫もされています。さらにその上で、現代の住宅は様々な技術の進歩によって、高気密高断熱の家づくりより健康的で快適な家づくりをすることができるようになってきたのです。
ところで、気密性が高い住宅とは?
では気密性が高い住宅とはどのような住宅なのでしょうか?
ひとことで言うと、気密性が高い家とは、できるだけ隙間をつくらないように建てられた家のことです。住宅性能上ではC値(相当隙間面積)という、家の延べ床面積に対して、隙間面積がどれだけあるかの割合で示される値で示されます。
C値=家の隙間面積(㎠)/建物の延べ床面積(㎡)
日本の住宅の多くは木造住宅です。いかに腕のいい大工さんが建てたとしても、必ず壁、床、窓などに、ちょっとした隙間は空くのはやむをえないとことです。そのような状況の中で、いかに快適に暮らせるかを考え、大工さんや施工会社の職人さんは自らの腕を存分に振るって家づくりをしてくださっています。
一方で、一般的な長年住み続けた住宅が老朽化してくると、隙間から隙間風が入り込むことも出てきます。現代はエアコンを空調として利用することが多いため、このように隙間が増えてくると空調効率も低下し、また、隙間風により空気の流れにムラができ、空気が淀みも生じる場所も出てくるなど、様々な影響があり、老朽化した住宅は省エネ、快適な居住性、耐久性の観点からもあまりよい状態ではありません。
自由度の高い工事には高気密住宅が必須?
特に注文住宅で家を新築する際に、自由度の高い空間づくりをしたい場合には、たとえば吹き抜けやロフトなどを設置したり、日本の夏の蒸し暑さや、冬の寒さの影響を抑えてくれる高気密・高断熱の住宅は欠かせないと言えるでしょう。
気密性を高めるには、断熱効果の高い窓などの建材を選ぶなど高品質の建材を使用して、断熱材の充填も隙間なく施工し、接合部分も気密シートやテープなどでしっかりと塞ぐなどの丁寧な施工、高度な施工技術も必要です。その後の長年にわたる快適な暮らしのことを考えれば、新築時にしっかりとした施工をしておくことが、その家の価値を高めることになります。
気密性が高い住宅が必要な理由
なぜ気密性の高い住宅が必要なのか。その理由は様々ですが、概ね以下の4点に集約されます。
省エネ性能を高める
第1には、室内の温度を快適に保つ省エネ性能が高い、という点です。エアコンなどの空調設備を使用する場合、昔の日本家屋の建付けで家を建てると、冷暖房効率が低く、電気料金が高額になってしまいます。気密性の高い住宅の場合、エアコンなどの空調設備で調節した空気が室外に漏れにくくなり、外気の流入も防いでくれますので、省エネルギーで快適な住環境を確保しやすいのです。
断熱性能を向上させる
第2には、外気と室内の気温差を維持する断熱性能も高い、という点です。断熱材は年々進化しており、以前よく利用されていたようなグラスウールは隙間が空きやすかったこともあり、劣化と共に断熱性能が低下してしまいましたが、近年、よく活用されている「アイシネン」は、吹付タイプの発泡体の不燃材で、家全体をすっぽり空気で覆うような非常に気密・断熱性の高い施工ができるようになりました。
結露を防止する
第3には、室内の結露を防ぐことができる、という点です。特に冬の寒さは、屋外と室内の気温差が大きく、室内の湿気が結露して、窓枠のみならず壁の中にたまり、カビが発生したり建材の腐食をもたらし、住宅を劣化させる要因となっています。高い気密性があれば、室内の湿気が壁の中に流れ込む心配はなくなり、住宅の老朽化を進ませずにすみます。
換気効率をよくする
第4には、換気効率がよくなる、という点です。室内の空気には、匂い、二酸化炭素、水蒸気、など様々な物質が存在します。気密性が高い住宅はこうした不快要因となる物質を効率的に屋外に排出する換気効率がよいのです。換気効率とは、対流性を確保することにもつながります。気密性の高いところと低いところがある場合、換気効率が悪くなり、空気が室内に滞ることで嫌な臭いなどがなかなか抜けないといった場合があります。できるだけ均一な気密性をもたせておくと、換気がしやすい家にもなります。
このように現代の住宅では、こうした気密性の高い住宅のほうが快適な住環境が確保しやすいのです。
高気密住宅のメリット
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気密性の高い住宅には、以下のようなメリットがあります。
【省エネ性】冷暖房効率がよく、電気代や燃料代を抑えられる
気密性が高いということは、温めた空気や冷やした空気が屋外に逃げにくいため、空調効率がよく、省エネルギーで空気を適温にすることができます。そのため、冷暖房にかかる電気代や燃料代を抑えることができます。
【耐久性】壁の内部の結露を防止することができるので、断熱性能も劣化しにくく、住宅も長持ちする
気密性が高い素材を用いて施工を行うことで、壁内の結露を発生しにくい構造にできるため、結露によって生じる断熱素材の劣化や腐食を防止し、断熱性能が低下しにくくなります。
【快適性】室内の気温差が少ないため快適で、ヒートショックのリスクも低減できる
気密性の高い住宅は、空調設備がない廊下、洗面所、トイレなどでも気温差を和らげてくれます。特に冬は、こうした水回りなどは底冷えがしますので、家族に高齢者や生活習慣病などの持病がある場合は、暖かい居室から急に寒い場所に移動したときに起きる「ヒートショック現象」の危険性があります。できるだけ気密性を高めて、室内の気温差が少ない環境にしておくほうが安心できるでしょう。
【空気の鮮度を保つ】気密性が高いため、外気の汚染物質の流入を防止できる
気密性が高いと外気の侵入も防ぐことができるため、大気中の花粉や汚染物質などの流入も抑え、空気の鮮度を維持することができますので、健康にも配慮した暮らしがしやすくなります。
【施工精度の高さ】施工精度が確保しやすくなるため、遮音性が高く、防音効果も期待できる
気密性の高い住宅は、性能の高い素材を使用し、精度の高い施工を施す必要があるため、気密性が維持されている住宅は遮音性も高くなります。自動車の音や近隣の生活音などの騒音が気になる場合は、気密性が高い住宅のほうが静かな住環境を確保しやすくなります。
高気密住宅のデメリット
気密性の高い住宅は様々なメリットがありますが、一方で、気密性が高いことによるデメリットもあります。
【設備の充実】換気や空調設備の充実が必要
気密性が高いということは、換気を適切に行わなかったり、空調設備を使用しないと室内の空気が滞りやすくなります。酷暑や極寒の日に空調を使用しないと、熱や冷えが室内の空気や素材にこもってしまうため、空調設備を適度に使用したり、24時間換気を行うことで快適な状態を維持しやすくなります。むしろ対策を講じることでデメリットではなく、より快適な環境づくりができると言えます。
【素材選びの重要性】気密性が高いため、健康に配慮した素材選びも重要
また、最低限、健康リスクのある建材は使用しないことは前提ですが、使用する建材や接着剤などによっては建材から発生する有害物質やハウスダストが室内に滞留すると、シックハウス症候群の原因となることがあります。そもそも有害物質が発生しにくい自然素材などの建材を選び、24時間換気を行うことで、リスクを抑えるようにしましょう。
高気密住宅の快適さ
このように、気密性の高い住宅は、素材選びや設備の性能も重視した家づくりが必要です。でききるだけエネルギーを使用しないで快適に暮らせるように、間取りや窓などの開口部の位置を工夫するなど、日本の伝統建築の思想もとり入れながら、現代に日本の気候風土にあった快適な住まいづくりをしたいですね。
まとめ
これまでみてきたように、気密性の高い住宅は、現代の住環境においては様々なメリットがあり、快適な住空間を維持しやすい機能性がります。省エネルギーで換気性もよい高気密住宅は、室内の空気を快適に調整しやすいため、夏の暑さ、冬の寒さも、気温差によって発生する様々な健康リスクを低減することもできます。
一方で気密性が高いため、高気密住宅は、そもそも有害物質が発生しない、あるいは調湿効果のある自然素材を活用するといった素材選びも重視する必要があります。また、速やかに換気ができるような換気システムや設備の導入も必要です。
より快適な住空間づくりをするためには、デザイン性だけでなく、最適な素材選び、設備や住宅の性能も重要です。快適な理想の住まいづくりをトータルにプランニングできる工事士や工務店に相談しながら検討することをおすすめします。
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